開演が1時間半押した夜の記憶(maruya328)
有楽町の
東京国際フォーラムで行われた公演に、
運営側の一員として、その現場に関わっていた。
その日は、会場前からすでに異様な熱気に包まれていた。
開演時間に向けて、観客も当然のように次々と集まり、
ロビーや外の動線にも人の気配が途切れなかった。
表向きは、
ごく普通の大規模コンサートの立ち上がりに見えたと思う。
ただ、
現場の中にいると、どうも様子が違っていた。
楽屋側やステージ裏の空気が、
いつもより張りつめている。
連絡が細かく行き交い、
時間だけが過ぎていく。
気になって中を覗いたとき、
その理由がなんとなく伝わってきた。
その時すでに、
Earth, Wind & Fireのメンバーの一人が、
体調をサポートするための装備のようなものを身につけている姿が目に入った。
専門的なことは分からないし、
詳しい事情を知っていたわけでもない。
ただ、その光景を見た瞬間に、
「ああ、これは万全な状態ではない中で、
それでもライブが行われようとしているんだな」
そう感じた。
その後、
現場は一気に慌ただしくなった。
予定していた開演時間を過ぎても、
なかなか始まらない。
観客席からは、次第に不安や苛立ちの空気も出てくる。
呼び出されて、
年下のスタッフたちと一緒に、
怒っている観客に頭を下げ、状況を説明し、
とにかく場をつなぐ。
結果的に、
開演は1時間半押しになった。
今まで関わってきた仕事の中でも、
体感的には間違いなく最長だったと思う。
あの1時間半は、やけに長く、
今でも妙に記憶に残っている。
そして、ようやく始まったステージ。
ライブ自体は、
確か1時間ほどだった。
そのステージ上で、
先ほど見かけたメンバーが、
体調を支える装備のようなものを背負いながら
演奏している姿があった。
派手な演出よりも、
その姿のほうが、強く印象に残っている。
無理をしているのか、
覚悟を決めているのか、
外から見ただけでは分からない。
ただ、
「それでもステージに立つ」という選択が、
どれほどのものなのかは、
現場にいた人間として、重く伝わってきた。
あの夜のことは、
音楽的な感動とは少し違う形で、
今でも心に残っている。
スタッフとして関わった数多くの現場の中でも、
あの1時間半の待ち時間と、
その後に始まったステージは、
自分の中で“最高記録”として刻まれている。
「華やかなステージの裏側には、いつも誰かの気遣いや、予期せぬトラブル、そして表現者の執念がありました。40年の現場経験で見てきたこうした『音の裏側にある真実』を、私は今、BGM制作の一音一音に込めています。」
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